広い空

心のままに話せる場所

青空と箱の中の猫

目をこすりながら起きる。

 

 

これが僕の日常の幕開けだ。

 

 

 

これだけ暑い日が続くと、エアコンをつけないと寝られやしない。

 

 

おまけに、こんな暑い季節に部屋を冷やして毛布をかぶって寝るというのがこの上ないほどの贅沢であり、至福なのだ。

 

というわけで、お決まりのエアコンと扇風機のダブル使いなのだ。

 

 

そんなことをしているものだから、朝起きると僕の目は乾燥している。

 

半目で寝ているということなのだろうか。

 

 

今度、ビデオをセットしてみてみるか。

 

 

 

今日の僕も、例外なく目だけでなく、喉も乾燥して起きた。

 

 

 

夏休みも終盤だ。

宿題はまだ残っている。

 

律儀にも、学校というのは休みの日にも勉強させようとしてくれる。

 

まったく、有難迷惑もいいところだ。

 

 

勉強といっても、学校だけじゃない。

クラスのやつらには、塾に通ってるやつだって多い。

 

 

学校で勉強して、塾でも勉強するなんて。

勉強しないと死ぬってくらい、勉強が好きじゃなきゃやってられない。

 

 

僕は、幸いにも勉強が好きなわけじゃないから、塾なんて行かなくても平気。

 

学校から出される宿題だけで大満足さ。

 

 

僕は、数学より国語の方が好きだ。

 

文字を書くのが好きだ。

物語を読み解くのも大好きだ。

 

 

宿題が出されたら、いつも国語をあとに残しておくんだ。

ゆっくりとりかかりたいからね。

 

 

 

数学や英語などの宿題は終わった。

さぁ、今日から大好きな国語の世界へと羽ばたこう!

 

 

国語の宿題を開き、問題を読みながらふと窓の外に目を向ける。

 

 

エアコンの利いた室内と違って、外はもそのすごい熱を帯びているようだ。

 

空は青く澄み渡り、雲はうっすらと見える程度だった。

 

 

近所の家に太陽の光が反射して、僕の目を攻撃してくる。

まぶしいっ。。。

 

 

あぁ、でもなんて贅沢なんだろう。

 

 

外はこんなにも暑いのに、僕は今それを客観的に涼しい室内から眺めていられるのだ。

 

 

 

僕の机の脇には、猫様専用の段ボール箱が置かれている。

 

 

置かれている、とは言うけど。

もちろん置いたのは僕だ。

 

 

猫様というのは、飼い主が机でなにかせっせと始めると、邪魔をしかけてくるのだ。

それらは、猫様からすると「遊ぼうよ」と言ってるだけなのかもしれないけどね。

 

でも、せっかく宿題しようと言う気になったときに、そうされてしまったら僕のやる気も失せてしまう。

 

それを防ぐための猫様ホイホイを用意したのだ。

 

 

猫様という生き物は、空き箱を置いておくと惹きつけられるようにそこに入っていく習性があるらしい。

 

 

実験的に、僕も置いてみることにした。

窓際、僕の机の端っこに。

 

窓際なら、猫様も通りの人間どもを観察できるだろう。

飛び交う小鳥を眺めることも、虫を眺めることもできるだろう。

 

そして、なにより、僕の手元に来ようとしていたことはどうでもよくなるに違いない。

 

 

ひとつ、たったひとつの誤算は、我が家の猫様は1匹ではないということだった。

 

3匹いるから、あと二つ箱を用意した方がいいのだろうか。

 

 

三つも箱を机に置いたら、僕は宿題どころではなくなるじゃないか。

 

 

 

そんなどうでもいいことを考えていることさえ楽しくなる。

 

僕は、物語とか空想とかが大好きなようだ。

 

 

青く澄み渡った夏の空と、僕の視界の端に映る箱の中の猫様。

 

 

とても素敵な日常だ。

 

 

 

僕の家の猫様は、家の中が世界のすべてだ。

外には出さないようにしている。

 

 

以前、保護した猫を外飼いしていた時に、遊びに行ったまま車にひかれて死んだ。

 

その事実が、僕の心にずしんと重く響いたんだ。

 

次、猫様とご縁があったら絶対に家の中で大事に育てようと。

 

 

 

家の中だけで飼うなんてかわいそう、外にも出してあげたほうがいいよ、なんて思うひとももちろんいるだろう。

 

それは、迎えた猫様と自分たち家族の間で様子をみて決めることだと、僕は思う。

 

 

幸い、僕の家の猫様は、家の中らから外を眺めるだけで事足りてる様子だ。

 

 

外で走り回れない分は、家の中に運動できるスペースを作ってあげるのだ。

 

 

キャットタワーとかも設置したし。

猫じゃらしも日々の日課だ。

 

 

猫様はツンデレな生き物である。

 

 

こちらがかまってほしくとも、お構いなしに手の届かないところで休んでいることもある。

 

そして、こちらが宿題をしようとすると、甘えてくるのだ。

僕は、そんな猫様にメロメロだから、きっと見破られてるんだろう。

 

 

 

ふと、問題を解く手を止めて猫様専用箱を見てみる。

 

とっても気持ちよさそうに、眠っておられる。

 

 

僕は、たまらなく幸せな気持ちになって、また問題にとりかかった。

 

 

僕の世界は、猫様を中心に回っているのかもしれない。

 

 

猫様が幸せそうにしていると、僕だって幸せな気持ちになる。

 

 

僕は時々、猫様の物語を作るんだ。

 

物語って言ったって、大層なことじゃない。

ちょっとした、詩みたいな、そんなささやかな物語。

 

 

ふふ。

恥ずかしいから、教えてあげないけどね。

 

 

僕は、猫様と物語が大好きなんだ。

 

 

クラスの男子より、少し男らしさに欠けるかもしれないけれど。

それでもいいんだ。

僕が僕らしく、好きなことをできれば。

 

 

 

夏休み終了まであと一週間。

国語の宿題は明日にも終われそうだ。

 

 

そしたら、残りの休みには、僕んちの猫様をモデルに物語でも書いてみようかな。

 

 

 

僕にも、書けるかな。

書けるといいな、猫様物語。